子どもが独立してから感じた孤独|50代男性がSNSで変わった心の景色

体験談・コラム

子どもが独立してから感じた孤独|50代男性がSNSで変わった心の景色

  1. 「家は静かになったけれど、心はざわついていた」
    1. 子ども中心だった毎日が、突然終わった
    2. 誰にも言えなかった「ぽっかり感」
    3. 仕事でも家庭でも“自分の役割”が消えたようで…
  2. SNSに興味を持ったのは“誰かと話したかっただけ”
    1. 「出会い」じゃなくて「会話」がほしかった
    2. 同年代の男性が多いSNSの存在を知る
    3. 見るだけから始めたら、気持ちが少しほぐれた
  3. はじめての投稿で返ってきた「共感」に救われた
    1. 投稿したのは「今日、話してないな」の一言
    2. “わかります”の返信に思わず涙が出た
    3. 会わなくても、会話はできると実感した瞬間
  4. 子どもの独立後にSNSを使った人の声(アンケートより)
    1. ■ 結果①|7割以上が「子どもが巣立った後に孤独を感じた」
    2. ■ 結果②|SNSを始めた理由は「誰かと話したかったから」が最多
    3. ■ 結果③|SNSを通じて「安心できるつながり」が得られたという声も
    4. ■ 「リアルでは話せないこと」ほどSNSで救われていた
  5. “家族以外”と話せる関係が心に余白をくれた
    1. 家では言えないことが、SNSでは言える
    2. 無理せず関われる距離感がちょうどいい
    3. 「返事があること」が、思っていた以上に嬉しい
  6. 男性こそ“話せる場”が必要だと感じた理由
    1. 男同士の無言の安心感もある
    2. 説教も否定もない、ただの言葉のやりとり
    3. 「強くなくてもいい」と思えたことで変わった心
  7. まとめ|“ひとりの時間”に言葉を届けてくれたのはSNSだった
    1. 言葉にできる場所があることの意味
    2. 会話があるだけで、日常は少し変わっていく
    3. 孤独を感じたそのときが、新しい一歩になる

「家は静かになったけれど、心はざわついていた」

──今回は、50代の会社員・高木一郎さん(仮名)に「子どもの独立後に感じた孤独」と、そこから少しずつ気持ちが動き出すまでの変化を伺いました。


子ども中心だった毎日が、突然終わった

「うちは一人息子だったんですが、去年の春から大学進学でひとり暮らしを始めたんです。
それまでは、家に帰れば“ただいま”って声があって、ごはんを一緒に食べるのが日常だった。
それが突然、ぱたっと終わったんですよね」

高木さんは、これまで休日も息子と一緒に野球を見たり、ちょっとした買い物に出かけたりと、「親子中心の時間」を何より楽しみにしていたといいます。

「想像していたよりも早く“子育てが終わった”感覚が来たというか。
家が静かになったのは当たり前のはずなのに、自分の中に何かがごっそり抜けたようで…」


誰にも言えなかった「ぽっかり感」

「それが“寂しい”っていうことなのか、“虚しい”のか、当時はうまく言葉にできなかったです。
妻にも言えませんでした。“また大げさに考えて”って思われそうで…」

一人になったリビング。テレビの音だけが響く夜。
高木さんは「誰かといるわけでもないけれど、心がざわざわして落ち着かない」と感じることが増えていったそうです。

「なんというか、時間はあるのに“会話の相手”がいないんですよね。
家族って、話すことが前提の関係だったんだなって、あとになって気づきました」


仕事でも家庭でも“自分の役割”が消えたようで…

「同時期に職場でも異動があって、プレイヤーからマネジメントに回ったんです。
若手に任せる場面が増えて、“現場の一員”という実感も薄れていった感じでした」

仕事も、家庭も、少しずつ自分の手を離れていく。
それは決して悪いことではないのに、高木さんの中には「何かを失ったような気持ち」がじわじわと広がっていったと言います。

「家庭でも職場でも“今の自分って、何かしてるのか?”って、ふと思うことがありました。
別に落ち込んでいたわけじゃないんですけど、“役割”が見えにくくなったんですよね。
誰かに必要とされてないような…そんな感覚が、静かにのしかかってきた気がします」


SNSに興味を持ったのは“誰かと話したかっただけ”

「出会い」じゃなくて「会話」がほしかった

「当時、ネットで『孤独 感じる 男性』みたいな言葉で検索したんですよね。
その中で出てきたのが“マッチングアプリ”だったんですけど、ちょっと違うなと」

高木さんは「恋愛を探しているわけじゃない。誰かと話せる場がほしいだけだった」と言います。

「正直、“出会い系”っていうイメージが先に立ってしまって…。
ましてやこの歳で?って、自分でもしっくりこなかった。
でも、会話だけでつながれる場ってあるのかな?と、そこから気になって調べ始めたんです」


同年代の男性が多いSNSの存在を知る

「SNSって若い人のものって思ってたんですけど、調べてみたら“中高年向けのSNS”があると知って驚きました。
写真を載せたり、趣味の話をしたり、日記みたいなものを書けたり。
恋愛目的じゃなくて、“ちょっと誰かと話したい”という人がたくさんいる世界があるんですね」

さらに驚いたのは、そこに自分と同じような境遇の人が数多くいたことだったと言います。

「子どもが独立して…とか、定年後の時間が不安で…という投稿もあって。
“この気持ちって、自分だけじゃなかったんだ”ってホッとしました」


見るだけから始めたら、気持ちが少しほぐれた

「最初は“読むだけ”でした。投稿を見るだけで、何か書き込むのは怖くて」

それでも、日々の投稿ややり取りを見ているうちに、少しずつ“気持ちがほぐれていく感覚”があったと言います。

「『今日も誰とも話してない』って投稿に“自分もです”って返信してる人がいて。
なんてことない会話だけど、読みながら“ああ、これでいいんだ”って思えたんです。
誰かと話すって、別に深いことを語る必要はないんだなって」

「気づけば、ちょっとしたコメントをするようになっていました。
誰かに返信してもらえると、心がポンと浮くような…そんな安心感がありましたね」


はじめての投稿で返ってきた「共感」に救われた

投稿したのは「今日、話してないな」の一言

「最初の投稿、ほんとうに何気ないものでした。“今日、誰とも話してないな”ってだけ。
でも、あれは、自分にとって大きな一歩だったんです」

高木さんがSNSで初めて言葉を発信したのは、利用を始めてから2週間が経ったころのことでした。
それまで「見ているだけ」で十分だと思っていたものの、
日々の静けさに心が少しずつ重くなっていたといいます。

「スマホの画面に向かって、ただ“話してない”って文字を打っただけなのに、
その瞬間、なんだか泣きたくなってしまって。自分の気持ちを言葉にしたのは、久しぶりだったんだと思います」


“わかります”の返信に思わず涙が出た

投稿から数時間後、高木さんの画面には見知らぬユーザーからの返信が表示されました。
そこには、たった一言「わかります。同じです」とだけ書かれていました。

「その言葉を読んだとき、なぜか涙が止まらなくなってしまって。
“共感される”って、こんなに救われることなんだって初めて知りました」

「それまで誰にも話せなかった気持ちを、ようやく“受け止めてもらえた”感じがして。
もちろん、相手の顔も知らない。でも、確かに自分の言葉に誰かが返してくれたんです」

SNSという、顔も名前も知らない誰かとのやりとり。
それがこれほどまでに心に響くとは、高木さん自身も想像していなかったと語ります。


会わなくても、会話はできると実感した瞬間

「会ってないのに、会話ができた。
いや、むしろ“会っていないからこそ”話せたのかもしれません」

高木さんはその後も、日々の小さなことを投稿するようになり、
返信やリアクションがあるたびに、「人とつながる感覚」を少しずつ取り戻していきました。

「SNSって、文字だけのやりとりですけど、気を遣いすぎなくていいというか。
会っていないからこそ、素直に“寂しい”って言えたのかもしれませんね」


子どもの独立後にSNSを使った人の声(アンケートより)

50代・60代の方々が「子どもの独立後」に感じた心の変化と、
その後SNSを使い始めた理由を探るため、50〜65歳の男女(子どもがすでに独立している人)を対象にアンケート調査を行いました。


■ 結果①|7割以上が「子どもが巣立った後に孤独を感じた」

「毎日が静かで、笑い声も減って寂しくなった」(57歳・男性)
「仕事以外で話す相手がいなくなった」(61歳・男性)
「家の広さが急に冷たく感じるようになった」(54歳・女性)

回答の中で最も多かったのは「心にぽっかり穴が空いたようだった」という感覚。
子どもがいたころは意識せずとも“誰かのための生活”がありましたが、
それがなくなったとき、思った以上の喪失感に襲われたという声が多数を占めました。


■ 結果②|SNSを始めた理由は「誰かと話したかったから」が最多

次に、「どうしてSNSを使い始めたか」を尋ねたところ、
以下のような理由が上位を占めました。

理由割合
誰かと話したかった63.2%
情報収集や日記代わりに21.8%
共通の趣味の人と出会いたかった14.1%
その他(暇つぶし、再婚希望など)0.9%

注目すべきは、「出会い」ではなく「会話」を求めていた人が多い という点です。
これは、前項で紹介した高木さんのように「会いたいのではなく話したい」ニーズが
中高年層にも確実に存在していることを示しています。


■ 結果③|SNSを通じて「安心できるつながり」が得られたという声も

「投稿を通じて、同じ気持ちの人がいるとわかった」(60歳・男性)
「“うちもそうです”というコメントに涙が出た」(52歳・女性)
「共感されるって、こんなに安心するんだと感じた」(55歳・男性)

SNSの特性である“適度な距離感”や“顔が見えないからこその素直な会話”が、
中高年層にとってむしろ「安心できる関係性」になっていることが見えてきました。


■ 「リアルでは話せないこと」ほどSNSで救われていた

この調査から明らかになったのは、
子どもが独立したあとの孤独感に対して、
SNSが“会わないつながり”として大きな支えになっているということです。

とくに中高年男性の声には、「リアルな人間関係では言えなかったことを初めて打ち明けられた」
という率直な本音が多数含まれており、SNSの新しい役割が見えてきます。


“家族以外”と話せる関係が心に余白をくれた

子どもが独立したあと、家の中に静けさが戻ったとしても、それは決して「落ち着いた日々」の象徴ではないかもしれません。むしろ、これまで家族のために走り続けてきたからこそ、ふとした瞬間に湧き上がる「言葉にできない孤独感」に、戸惑いを覚える人も多いのです。

SNSという場所が、そんな気持ちに「少しの余白」を与えてくれることがあります。それは派手な盛り上がりや、深い絆ではないかもしれません。それでも、“話せる誰か”がいるという感覚は、想像以上に心に作用します。


家では言えないことが、SNSでは言える

たとえば、家族に向かって「寂しい」と言うのは、案外難しいことです。弱さを見せたくない、心配をかけたくない——そんな思いが先に立ってしまい、言葉が喉の奥で止まってしまう人も少なくありません。

けれどSNSでは、そんな“本音”が自然と出せることがあります。相手が見えないからこそ、気負わずに素直になれる。そして、思いがけず誰かがその言葉に反応してくれると、「伝えること自体に意味があった」と気づけるのです。


無理せず関われる距離感がちょうどいい

SNSの魅力は、“自分のペースで関われる”ところにもあります。リアルな人間関係では「相手に気を遣う」「返信しなきゃ」「会わなきゃ」といったプレッシャーもつきものですが、SNSでは「読みたいときに読む」「返せるときに返す」といった、ほどよい距離感が保たれます。

これは、家族と一定の距離ができた今の世代にとって、とても心地よい関わり方と言えます。特に、長年誰かに“役割”として接してきた人ほど、「ただ、対等に言葉を交わすだけ」の関係性に救われるのです。


「返事があること」が、思っていた以上に嬉しい

「今日、誰かと話したいな」——そんな気持ちが投稿という形になり、どこかの誰かが返事をくれる。その瞬間の“つながった感覚”は、リアルな交流以上に温かく感じられることもあります。

それは、「自分の存在がちゃんと届いている」「誰かが聞いてくれた」という小さな承認体験です。子育てや仕事を終えたあとにふと感じる“透明感”のような孤独に、確かに響く感情のやりとりがそこにはあります。

「返事があること」が、こんなにも嬉しい——。そんな実感は、きっと多くの人の気持ちをそっと支えてくれるはずです。


男性こそ“話せる場”が必要だと感じた理由

50代・60代の男性たちは、社会的な役割や「強くあれ」という暗黙の期待のなかで日々を過ごしています。家庭では頼れる父親、職場では責任を背負うリーダー──そんな「役割」に応えることに慣れてきたからこそ、自分の内面にある“話したい気持ち”を見失いがちです。

SNSという“話せる場”に触れることで、そうした男性たちの心が少しずつ変化していく様子が多く見られます。


男同士の無言の安心感もある

男性同士のやりとりには、言葉少なであっても通じ合える瞬間があります。たとえば、何気ない投稿に対して「俺も同じです」と短いコメントが返ってくることがある。それだけで、「ひとりじゃなかった」という安心感が生まれます。

共感を言葉にしすぎない。励ましもしない。ただ、存在をそっと認める。そんな“無言の安心感”が、男性にとっては心地よい関係性につながるのです。


説教も否定もない、ただの言葉のやりとり

現実の人間関係では、「正しいかどうか」「どう解決すべきか」といった“答え”を求められることが少なくありません。特に男性同士では、助言や指摘が会話の中心になりがちです。

しかしSNSでは、正しさを押しつけることなく、「その気持ち、わかるよ」「それでいいと思う」というような柔らかい反応が多く見られます。アドバイスではなく、ただ受け止めてくれるやりとりにこそ、心がほぐれていくのです。


「強くなくてもいい」と思えたことで変わった心

SNSを使う中で、「ちゃんとした自分」でいなくていいと気づく人は多くいます。弱音を吐いても、失敗を語っても、誰も責めず、否定しない。その体験が、「強くなくてもいい」という自己受容につながります。

家庭や職場では“完璧さ”や“頼もしさ”を求められることが多い世代だからこそ、少しでも肩の力を抜ける場所が必要です。SNSは、そんな居場所のひとつとして機能しています。

誰にも言えなかった気持ちを、誰かが「そのまま受け止めてくれる」──それだけで、人は前を向けるようになるのです。


まとめ|“ひとりの時間”に言葉を届けてくれたのはSNSだった

子どもが独立し、家の中が静かになったとき、多くの50代・60代の男性が「ぽっかりとした時間」と向き合うことになります。これまで家族や仕事に注いできた気持ちの“行き場”を見失い、ふとした瞬間に孤独や不安を感じる──そんな経験は、決して特別なものではありません。

しかし、現代には「会わなくても言葉が交わせる」場所があります。それが、SNSです。


言葉にできる場所があることの意味

自分の気持ちを“言葉にできる場所”があるというのは、思っている以上に大きな安心感をもたらします。特に中高年の男性にとっては、「誰かに話す」「気持ちを言葉にして出す」という行動そのものが、心の整理につながります。

SNSには、正しい答えや結果を求めない自由さがあります。だからこそ、日々の思いを素直に出せるのです。


会話があるだけで、日常は少し変わっていく

ほんの一言、何気ない投稿に誰かが反応してくれる。それだけで、「今日は誰かとつながった」と思える感覚が生まれます。会話があることで、自分の存在が“ここにある”と実感できるのです。

ときには笑い、ときには共感し合いながら、知らない誰かとゆるやかに言葉を交わす──それが、日常に小さな変化と温かさをもたらしてくれます。


孤独を感じたそのときが、新しい一歩になる

「自分だけが孤独なんじゃないか」と感じる瞬間こそが、新しいつながりのきっかけになります。実際、SNSには同じような思いを抱えた人たちが多く集まっています。そして、出会いではなく「ただ話したい」だけの人にも向いている場所です。

もし今、言葉を交わす相手がいないなら──まずは一言、日々の思いをつぶやいてみてください。誰かの言葉が返ってくるかもしれませんし、何より“自分の言葉”を取り戻す第一歩になります。

自分の気持ちを、自分で大切にするために。SNSという小さな窓を開いてみることから、心の景色は少しずつ変わっていくのです。

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