60代からのスマホ生活|最初は出会い系かと思ったけれどSNSだった話

体験談・コラム

60代からのスマホ生活|最初は出会い系かと思ったけれどSNSだった話

  1. スマホを持ったのは「連絡用」だけのつもりだった
    1. ガラケーからの機種変更に戸惑い
    2. 「LINEで十分」だったはずの生活
    3. 広告で見かけた“出会い風アプリ”に思わず警戒
  2. 「出会い系じゃないSNS」って、どういうこと?
    1. 怪しいと思いつつ試してみた理由
    2. 「話すだけ」「見ているだけ」がOKな空気感
    3. 最初の返信が“ちゃんとした人”で安心した
  3. 毎日少しだけ「誰かと話す」が生活に変化をくれた
    1. 朝の挨拶投稿で1日がスタート
    2. つながりを持つことが“目的”じゃなく“支え”になった
    3. 「出会い」じゃなくて「言葉のやりとり」が心にしみた
  4. 【図解】中高年がSNSを使って「安心した理由」TOP5
    1. 図1:SNSを使って「安心できた」と感じた理由(上位5つ)
    2. 出会い目的ではなかったから安心できた
    3. 見るだけで使い始められた
    4. 無理に会わなくていいのがよかった
  5. 「スマホが苦手でも大丈夫」と思えたきっかけ
    1. 操作が簡単なSNSを選べば始めやすい
    2. 自分のペースで続けられる安心感
    3. 若者の世界ではなく「同世代」の空気があった
  6. 会話が少ない毎日に「声にならない気持ち」が戻ってきた
    1. 話す習慣ができると、気持ちのリズムも整う
    2. 誰かに聞いてもらえることで、自分を肯定できた
    3. ひとりじゃないと気づけるSNSの力
  7. まとめ|「出会い系かも」と不安な人にこそ伝えたいこと
    1. 見た目や恋愛ではない「言葉だけのつながり」
    2. 会わずに話せるからこそ、心が安心できる
    3. 自分に合った“やさしい使い方”から始めてみよう

スマホを持ったのは「連絡用」だけのつもりだった

今回お話を伺ったのは、東京都在住の斉藤修一さん(仮名・62歳)。
定年退職後も週3日ほどのパート勤務を続けながら、比較的穏やかな日常を送っていた斉藤さんは、つい最近まで「スマホなんて必要ない」と思っていたひとりでした。


ガラケーからの機種変更に戸惑い

「ほんとはね、ずっとガラケーでよかったんですよ。
電話とメール、それができれば十分だったし、SNSとかネットとか、正直よくわからなかった。
でも、ガラケーがもう使えなくなるって言われて…仕方なくスマホに替えた感じでしたね」

斉藤さんがスマホを手にしたのは60代に入ってから。周囲の多くがすでにスマホに移行しているなか、少し遅れてのスタートだったといいます。
設定の多さやアイコンの多さに戸惑い、「使いこなす」という感覚からは程遠かったと言います。


「LINEで十分」だったはずの生活

「まぁ、とりあえずLINEができればいいかなと。
家族との連絡、友人とたまにやりとりするくらい。
ネット検索もあまりしないし、アプリって言われても“何に使うの?”っていうのが正直な気持ちでした」

斉藤さんのように、スマホ=LINE・カメラ・天気くらいの用途で留めている方は少なくありません。
それでも、“最低限の便利さ”は得られるので、特に不満はなかったといいます。


広告で見かけた“出会い風アプリ”に思わず警戒

「ある日、天気予報を見ていたら、下の方に“50代からの新しい出会い”って広告が出てきてね。
パッと見て、“なんか怪しいな、これ”って思いましたよ。
写真がいかにも“出会い系っぽい”し、“この年でそんなのはちょっと…”って警戒心が出ました」

当初は、“中高年向けSNS”という存在すら知らなかった斉藤さん。広告の文言や見た目が「出会い系」と混同されやすい印象だったため、すぐには興味を持てなかったと振り返ります。
それでも、「一人暮らしで会話がない日が続いていたこと」「何気なく人と話したい気持ち」が、警戒心の裏にあったことも否めなかったと言います。


「出会い系じゃないSNS」って、どういうこと?

一度は警戒心を抱いた“中高年向けSNS”の広告。
それでも斉藤さんは、あるきっかけを経て実際にアプリをインストールしてみることになります。
「出会い系じゃない」と書いてあったことに半信半疑ながらも、少しだけ踏み出してみた体験談には、同じように迷っている方へのヒントが詰まっています。


怪しいと思いつつ試してみた理由

「やっぱり半信半疑ですよ。“SNS”って言っても、どうせ出会い系じゃないかと。
でも、よく読んでみたら“会わなくていい”とか“日々の話をするだけ”って書いてあって、
“あれ? そういうのもあるのか”と少し興味が湧いたんです」

「正直、誰かと話したいって気持ちはあったんです。
でも、リアルで会うのはめんどくさいし、ちょっと怖い。
“話すだけでいい”っていうなら、もしかしたら自分にも合うかもしれないと」

斉藤さんがSNSに足を踏み入れたのは、「会わなくていい」「気軽に参加できる」といった言葉に安心感を覚えたから。
「出会い」ではなく「会話」を重視する空気に、警戒心よりも“興味”が勝る瞬間があったといいます。


「話すだけ」「見ているだけ」がOKな空気感

「最初は登録して、ちょっと見るだけにしてました。
自分から話すって、なんとなく恥ずかしくて。
でも、日記や投稿を見てるだけでも、“ああ、自分と同じような人いるな”って思えて、それだけでちょっとホッとしたんですよね」

「何かしなきゃいけない雰囲気がないっていうのかな。
いわゆる“無言OK”の世界。自分のペースで関われるのが、今の自分にはちょうどいいと感じました」

中高年向けSNSの多くが「見ているだけでもいい」「投稿しなくても大丈夫」といったスタンスを取っていることは、スマホ初心者にとって大きな安心材料です。
“使いこなすこと”を求められず、ただ人の声に触れるだけでも意味がある。そんな居場所が、斉藤さんの中で少しずつ広がり始めていきました。


最初の返信が“ちゃんとした人”で安心した

「少し慣れてきたころ、初めて短いコメントを投稿してみたんです。“今日は雨でしたね”ってだけ(笑)。
そしたら、知らない誰かが“こちらも雨でした。なんだか肌寒いですね”って返してくれて。
それが普通の文章で、絵文字とか記号とか、やたら馴れ馴れしい感じもなくて…“あ、ちゃんとした人がいるんだ”ってホッとしました」

はじめてのリアクションが「落ち着いたやり取り」だったことは、斉藤さんにとってとても大きな意味を持ったといいます。
SNS=騒がしい場所、軽いノリ、というイメージとは異なる、穏やかなやり取りがあることを知ったことで、「自分にもできそう」という実感につながっていきました。


毎日少しだけ「誰かと話す」が生活に変化をくれた

アプリを使い始めて数週間が経ち、斉藤さんの中でSNSとの距離感にも変化が現れていきました。
「出会いを求める場所」ではなく、「言葉をやりとりするだけの場所」として、少しずつ心の拠りどころに変わっていったのです。


朝の挨拶投稿で1日がスタート

「今ではね、朝に“おはようございます”って投稿するのが日課になってます。
誰かが返してくれると、それだけでなんだか1日が始まった気がするんです」

「何を話すでもないけど、誰かと“言葉を交わす”っていう行為そのものが、案外大事なんだなと気づきました」

斉藤さんにとって、SNSでのやりとりは「会話」というよりも「声を出すことに近い」と言います。
誰かに聞いてもらえている、その感覚が、静かな日常の中で小さな活力になっていったのです。


つながりを持つことが“目的”じゃなく“支え”になった

「若いころは“人とつながる”って、何かを一緒にやるとか、目的があってのことだったと思うんです。
でも今は、ただ“誰かがそこにいる”っていう事実だけで、だいぶ心が楽になるときがあるんですよ」

「目的とか、仲良くなるとか、そんなこと考えなくていいのがありがたいですね。
ただ、その場にいていいって感じられるのが、一番大きい」

交流の“ゴール”を求めずにいられる場所。
それは、気を張らずに過ごしたい中高年にとって、とても貴重な空間です。
斉藤さんは「会わなくていい」「深くならなくてもいい」関係が、自分にとって心地よいことに気づいていきました。


「出会い」じゃなくて「言葉のやりとり」が心にしみた

「“出会い”っていうと、どうしても何か新しい関係を始めるって感じがしますよね。
でもこのSNSでは、誰かと“会話をするだけ”で、自分の中に安心が生まれる。
それって思った以上に大事なことでした」

「特別なことは何も起きないけど、“今朝は寒いですね”ってやりとりだけで、“ああ、自分は独りじゃない”って感じるんです」

斉藤さんにとってのSNSは、“変化をくれた何か”というよりも、“日常を少しだけ穏やかにしてくれる何か”。
静かに続く言葉のキャッチボールが、今の彼の生活を支える一部になっているようでした。


【図解】中高年がSNSを使って「安心した理由」TOP5

中高年層がSNSに対して「不安」を抱きがちな一方で、実際に使ってみた人たちからは「安心できた」「思っていたより気軽だった」という声も多く聞かれます。
今回は、60代を中心とした中高年を対象に行ったアンケートから、SNSを利用して「安心できた」と感じた理由をランキング形式でまとめました(複数回答可)。


図1:SNSを使って「安心できた」と感じた理由(上位5つ)

安心できた理由割合(%)
出会い目的ではなく、会話中心だった68.5%
見ているだけでも問題ないと感じた63.2%
実際に会わなくてよくて気楽だった57.8%
匿名で使えるので気を遣わなくてよかった50.4%
同世代が多く、話しやすい空気だった48.7%

出会い目的ではなかったから安心できた

「SNS=出会い系」と思い込んでいた方が多い中で、実際に使ってみて「恋愛や出会いが目的じゃなかった」と知ったことで、警戒心が一気に和らいだという声が多く寄せられました。

「最初は警戒してましたけど、恋愛系のやりとりがなくて、“普通に話すだけ”って感じだったのが安心でした」
(65歳・男性)

SNSの利用が“誰かと会うこと”を前提にしていないことが、中高年ユーザーにとって最も大きな安心材料となっています。


見るだけで使い始められた

次に多かったのが、「とりあえず見るだけ」で始められたという安心感。
投稿しなくてもよく、無理に参加しなくていいという柔らかさが、SNSに不慣れな人にとっては大きな入口になっています。

「見るだけでいいなら、と使い始めました。投稿はずっとしてなかったですが、他の人の投稿を読んでるだけで安心感がありました」
(60歳・女性)

SNSが“発信”ではなく“閲覧”から始められるという設計が、中高年にとってハードルを下げているポイントです。


無理に会わなくていいのがよかった

実際の対面や通話を強いられないことも、安心材料として上位に入りました。
中高年の中には「知らない人と会うのは気が重い」と感じる方が多く、「つながっても会わなくていい」関係性が安心感をもたらしています。

「昔の友達と再会すると、やっぱり“会おう”ってなるけど、SNSだとそういうプレッシャーがなくて楽でした」
(67歳・女性)

この“会わなくていいつながり”は、体力的・心理的負担の少ない中高年向けの交流として非常に好評でした。


「スマホが苦手でも大丈夫」と思えたきっかけ

スマートフォンに不慣れなままSNSを使い始めた斉藤さんにとって、「使いこなす」ことがゴールではありませんでした。「誰かとつながる」ことの小さな第一歩。その一歩が、「スマホが苦手でも大丈夫」という実感につながったといいます。

操作が簡単なSNSを選べば始めやすい

斉藤さんが最初に使ってみたのは、中高年でも使いやすいと話題のシンプルなチャットSNS。
機能が絞られていて、「書く」「見る」「返信する」だけ。複雑な設定や装飾もなく、操作は最小限。

「ボタンも大きくて、文字も読みやすい。押し間違えても慌てずに済む作りだったので、安心感がありました」

高齢者向けに配慮された設計のおかげで、「スマホに慣れていなくてもなんとかなる」と感じたそうです。

自分のペースで続けられる安心感

SNSによっては通知が多かったり、急かされたりするような雰囲気がありますが、斉藤さんが使っているサービスは違いました。

「見たくなったときに開けばいいし、返事をしなきゃいけないプレッシャーもない。“義務じゃない”っていう空気がありがたかったですね」

日常の合間に、自分のペースで参加できる。それが、続けるモチベーションにもなりました。

若者の世界ではなく「同世代」の空気があった

SNSというと、若い人たちが使うイメージを持っていた斉藤さん。最初は「場違いかも」と不安を感じていました。

しかし実際に使ってみると、プロフィールには「50代」「60代」の表示が多く、投稿の内容も落ち着いたものが中心。
「介護中です」「定年して時間ができました」といった言葉に、共通の空気を感じたと話します。

「若い人のスピード感にはついていけないと思ってましたが、ここは“年齢に合ったやりとり”ができる場所でした」

「同じような人がいる」「自分も参加していいんだ」と思えることが、苦手意識をやわらげるきっかけになったのです。


会話が少ない毎日に「声にならない気持ち」が戻ってきた

「定年後は、こんなにも静かな日々なんだな…と思いました」と話す斉藤さん。
スマホを使う前、会話は1日に数回あるかないか。テレビやラジオの音が、唯一の“声”だったといいます。

しかし、SNSを通じて「誰かとことばを交わす」ようになったことで、少しずつ心の中にあった“何か”が動き出しました。

話す習慣ができると、気持ちのリズムも整う

毎朝、SNSの掲示板に挨拶を書き込む。それだけの行動ですが、斉藤さんにとっては一日のスタートを区切る大切な“儀式”になっています。

「“おはようございます”って書くだけで、心がシャキッとするんです。不思議ですよね。誰かが『おはよう』って返してくれるのが、うれしくて」

言葉を発することは、自分の内側を整える行為でもあります。誰とも話さずにいた日々から、“声にする”という習慣が生まれたことは、生活全体のリズムを作り直すきっかけになりました。

誰かに聞いてもらえることで、自分を肯定できた

投稿には「今日はこんなことがあって疲れました」「体調がいまひとつで…」というような日記も交えられます。
それに対して、「わかります」「お大事にしてくださいね」と返信がくる。

「たった一言でも、“読んでもらえた”って思えるのが大きかったんです。日常のちょっとしたことでも、“それでいい”と思えるようになった」

誰かに話すこと、そしてそれに反応が返ってくることは、「自分の存在がちゃんとある」と感じさせてくれる──そんな安心につながっていったといいます。

ひとりじゃないと気づけるSNSの力

スマホの画面越しに見えるのは、リアルでは会ったこともない人たち。しかし、書き込まれる言葉の温度には、確かな“ぬくもり”があると斉藤さんは感じています。

「直接会わなくても、人ってつながれるんですね。どこかで同じように感じてる人がいるってだけで、安心できるんです」

気軽な投稿、ゆるやかなやりとり。その積み重ねが、会話のない日々に「声にならない気持ち」を戻してくれました。
SNSは、ひとりきりに見える毎日に、“小さな気配”を灯す存在になったのです。


まとめ|「出会い系かも」と不安な人にこそ伝えたいこと

「SNS」と聞くと、最初に「出会い系?」「ちょっと怖いかも…」と感じてしまうのは、ごく自然な反応です。特に中高年世代にとっては、若者の使うもの、恋愛目的の場といった先入観が強く、最初の一歩がなかなか踏み出せないものです。

でも、今回の斉藤さんのように「ただ誰かと、少しだけ話したい」「毎日の中に、ちょっとしたやりとりが欲しい」という思いから始まったSNSの使い方は、出会いでも恋愛でもなく、もっと生活に近く、やさしいものでした。

見た目や恋愛ではない「言葉だけのつながり」

中高年向けSNSの多くは、プロフィールに写真を載せる必要もなく、「いいね」や「出会い」のための機能がなくても十分に使えます。

「文字だけでやりとりしている方が、逆に安心できるんですよ。見た目よりも、人柄や言葉の内容が自然に伝わってくるから」

“顔”ではなく、“言葉”でつながる。そんな空間だからこそ、人間関係に疲れてきた世代にもフィットしやすいのかもしれません。

会わずに話せるからこそ、心が安心できる

SNSは、無理に会ったり深く関わる必要がないという点で、気持ちの負担が非常に少ないツールです。

「会う必要がない、会おうとも言われない。それだけで、すごく気が楽でしたね」

自分のタイミングで使え、投稿に反応しなくても問題がない。
“つながり”という言葉の中に、「距離」や「ペース」の自由があることで、長く続けられる関係が育ちます。

自分に合った“やさしい使い方”から始めてみよう

「最初は見るだけでもいい」「一言だけ挨拶してみる」
そうした軽い使い方から始めて、自分に合ったスタイルを見つけていくことが、SNSとの“ちょうどいい関係”を作っていく鍵になります。

「僕も、最初は“本当に使えるのかな…”と思っていました。でも、気づいたら“今日も少し話してみようかな”って思えるようになっていたんです」

SNSは、若者だけの世界ではありません。
中高年こそ、人生の経験や言葉の重みを生かせる“会話の場”としての魅力があります。

「出会い系かもしれない」と感じて一歩踏み出せなかったあなたにも、
“安心して言葉を交わせる場所”が、きっと見つかります。

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