60代で“仲間”を見つけた人たちのリアルな体験談
60代になって「仲間がほしい」と思ったきっかけとは
「もうすぐ定年だ」「子どもが独立した」「気づいたら一日誰とも話していなかった」──
60代になると、そんな瞬間にふと「仲間がほしい」と感じる方が少なくありません。
それまで仕事や家庭の中で“自然にあったつながり”が減り、自分の意思でつながりをつくる必要性が出てくるのが、この年代の特徴です。
◆ 役割からの解放が“ひとりの時間”を増やした
60代は、人生の節目をいくつも迎える時期です。
- 定年退職で毎日の仕事がなくなる
- 子どもが独立して家が静かになる
- 親の介護や見送りで家族構成が変わる
これまで「忙しさ」に隠れていた“孤独感”が、急に顔を出すこともあります。
「こんなに一人の時間って長かったっけ?」
「今日は誰ともしゃべらなかったな…」
そんな小さな違和感が、「誰かと話したい」「仲間がほしい」という思いにつながっていくのです。
◆ 家族や古い友人とは“違う”関係を求めていた
長年の家族や古い友人は大切な存在ですが、それだけでは補えないこともあります。
たとえば──
- 家族には言いにくい愚痴や悩み
- 古い友人とは話題や価値観が少しずつズレてきた
- 毎日一緒にいるわけではないけれど、安心してやりとりできる相手がほしい
こうした感覚から、多くの人が「新しい仲間」「ゆるやかな関係」を探し始めます。
◆「友達」よりも「気軽に話せる誰か」
60代の仲間づくりは、若い頃のように「親友を作ろう」とするものではありません。
むしろ、
- 話が合う人と少し話せる
- 毎日でなくても、時々近況を伝え合える
- 会わなくても、見守り合っていると感じられる
そんな**“無理のないつながり”が求められる時代**に入っているのです。
◆ 仲間づくりの入口は「雑談」や「ひとこと投稿」だった
実際に仲間を見つけた60代の多くが、最初は「趣味の話」「日常の記録」「軽い挨拶」などから会話を始めています。
誰かと深くつながろうとするのではなく、自分の言葉を少しだけ外に出してみる。
その小さな行動が、やがて「仲間」と呼べる存在につながっていきます。
昔の友達と今の「つながり方」の違い
若いころは自然とできていた“友達”。しかし、60代になると、その関係性のあり方にも変化が訪れます。
昔の友人とのつながりと、今から始まる新しい関係──その違いを感じることで、自分に合った「これからのつながり方」が見えてきます。
● 昔の友達は“積み重ね”、今のつながりは“共感”から始まる
かつての友人は、職場・学校・近所・親の関係など、環境がつなげてくれた存在でした。
自然に会う機会が多く、長年の時間をともにしてきたことで、「共有の歴史」が強い絆になっていました。
一方、60代以降に出会う人とは、環境よりも**興味・関心・考え方の“共感”**がきっかけとなります。
✅ 同じ趣味を持っている
✅ 同じ時代の出来事に反応してくれる
✅ 同じような悩みや孤独を抱えていた
そうした「今の自分の気持ちに合う人」とのつながりは、意外にも心地よく感じられるものです。
● 深いつながりではなく“安心できる距離感”が大事に
昔の友人との関係は、しばしば「義理・責任・気遣い」が付きまといます。
- 「年賀状出してないけど大丈夫かな」
- 「長い間会ってないのに急に連絡していいのか」
- 「話が合わなくなってきたような気がする」
そんな中で、**新しくできたつながりの“気楽さ”**に救われたという声も多くあります。
現代では、「深くなくていい、でもあたたかい」という関係性が求められています。
● “同じ目線”で話せる相手との出会い
60代になると、「肩書」や「家族構成」「経歴」よりも、「今どう感じているか」が会話の中心になります。
昔の友人は過去を知っているからこそ気を遣うこともありますが、今出会う人とは**“今の等身大の自分”で向き合える**ことが特徴です。
- 「最近、毎朝散歩を始めたんですよ」
- 「ちょっとしたことで嬉しくなるようになってきて」
- 「昔より人と話すのが楽になった気がする」
こうした何気ない話を「わかるなぁ」と受け止めてくれる相手が、今の自分にとっての“仲間”となっていくのです。
● SNSやチャットから始まる“ゆるやかな関係”が新しい
かつての友達は“会って話す”のが基本でしたが、現代では「SNSでの挨拶」「日記へのコメント」「グループチャットでのやりとり」など、
文字中心の気軽なやりとりから人間関係が育まれるようになりました。
「今日はこんなことがあった」とポツリと書いた投稿に
「それいいですね」「わたしもそんな日ありました」などの反応が来る。
この小さなつながりの積み重ねが、「話したいときに話せる仲間」をつくってくれるのです。
【体験談1】料理好きの仲間と毎日ひとことレシピ交換(62歳・女性)
「誰かと一緒にごはんを作ってるみたいな気持ちになります」
──62歳・女性・東京都在住
● きっかけは、何気ない一枚の“晩ごはん写真”
会社を定年退職し、時間にゆとりができたものの、
「今日は誰とも話していない」と感じる日が増えてきた──と語るAさん(62歳)。
そんなある日、交流アプリの日記機能に何気なく載せたのが、
「今日の晩ごはん」の写真と一言コメントでした。
「冷蔵庫の残りもので筑前煮。味しみてて美味しくできました」
この投稿がきっかけで、同じアプリ内で料理好きな人たちから「美味しそう!」「うちも似たようなの作ったよ」などの反応が届き、
“レシピを通じた交流”が自然に始まったのです。
● 「毎日ひとこと」で、気負わず続く仲間とのやりとり
Aさんたちのグループでは、「毎日ひとことレシピ交換」が定番になっています。
- 「冷蔵庫の中で余ってた大根、レンジでチンしてポン酢かけただけ」
- 「鶏胸肉に片栗粉まぶして焼くとふわっとしますよ」
- 「さつまいもとヨーグルトで簡単おやつ!」
料理本に載っているような凝ったレシピではなく、
ちょっとしたアイデアや工夫、ほっこりする日常が詰まっています。
「毎日投稿しなくてもいい」というルールもあり、
無理せず続けられるのが長続きの秘訣です。
● 見えない“共感”の輪が、自分をほぐしてくれる
料理を通じた会話には、不思議な安心感があります。
- 「冷蔵庫がすっからかんだとわかると、みんなが“あるある”って笑ってくれる」
- 「旦那が味に文句言ってきたって書いたら、3人から“わかる〜”って返事が来た」
- 「自分の料理にちょっと自信が持てるようになった」
そう語るAさんの表情は、明るく柔らか。
「誰かに聞いてほしい」「褒められたい」「ただ共感してほしい」という
小さな気持ちを受け止めてくれる仲間が、料理をきっかけに自然とできていったのです。
● 仲間と一緒に、年齢を重ねる楽しさを知る
今では、季節のイベントに合わせて「ひな祭りレシピ」「夏バテ防止メニュー」などのテーマ投稿も開催。
参加しているのは全国各地の60代前後の男女で、**「料理を通じて日常を語れる関係」**が心の支えになっています。
「年齢を重ねるのって、ひとりだと少しさみしい。でも、
“今日も作ったよ”って誰かと共有できると、それだけで元気が出るんです。」
Aさんの言葉からは、生活の中のほんの一言が、新しい仲間との絆になっていくことが伝わってきます。
【体験談2】音楽好きの集まりで青春時代を思い出した(65歳・男性)
「あの頃のワクワクが、またよみがえった気がしました」
──65歳・男性・埼玉県在住
● きっかけは懐かしのレコード話から
「子どもも独立し、定年後の暮らしにも慣れてきたけれど、
なんだか心が動かない日々が続いていたんです」──と語るBさん(65歳)。
ある日、シニア向けSNSの中で見かけたのが、**「70年代ロック好き集まれ」**というグループ投稿。
好奇心からそっとのぞいてみると、懐かしいアーティスト名がずらり。
「サイモン&ガーファンクル聴くと学生時代を思い出す」
「スピーカーの前でレコードに耳を傾けてた頃が懐かしい」
そんな投稿の数々に、「あ、自分の居場所かも」と感じ、思わず参加ボタンを押したのが始まりでした。
● “音楽トーク”が止まらない
グループ内では、昔の名曲について語り合うのはもちろん、
YouTubeで見つけたライブ映像のリンクを紹介し合ったり、
「これって覚えてる?」とカセットテープの写真をシェアしたり。
「あのときの空気がよみがえるような会話ばかりで、つい夢中になります」
週末には「今週のおすすめ1曲」をテーマに感想をシェアするプチイベントも開催され、
Bさんは毎回「高校時代の放課後に戻ったような気分」だと話します。
● 仲間と語ることで“音楽のある生活”が戻った
このグループに参加してからというもの、Bさんの生活に変化が生まれました。
- 朝の散歩中にイヤホンで好きな曲を聴くように
- 気に入った歌詞の一節を投稿して、語り合う
- 眠る前に、昔のアルバムを一曲だけじっくり聴く時間を作る
音楽を通じて、「心に余白が生まれた」と感じているそうです。
「“また明日話そう”と思える誰かがいるって、本当にありがたいことです」
● “同じ時代を生きた”仲間のつながりが深まる
不思議なのは、直接会ったことがないのに、昔からの知り合いのような安心感があるということ。
同じ年代を生き、同じ音楽を聴き、同じ空気を感じてきた──それが、自然と心を近づけてくれます。
「共通の音楽があると、年齢も地域も超えてつながれるんですね」
Bさんは今、新たな夢として「このグループの人たちで、いつか小さな音楽オフ会ができたら」と考えているそうです。
● 無理に“友達を作る”のではなく、“好き”を語るだけでいい
「友達を作らなきゃ」と思うと、かえって難しくなることもあります。
でも、自分の“好き”や“懐かしさ”を語る場所があれば、
そこに自然と人は集まってくる──Bさんの体験は、そのことを教えてくれます。
【体験談3】雑談グループで“何気ない話”を楽しめる日々(68歳・女性)
「特別な話なんてしなくても、“聞いてくれる誰か”がいるってうれしい」
──68歳・女性・大阪府在住
● 「話し相手がいない」が当たり前だった日々
Cさん(68歳)は、長年専業主婦として家事と育児に励んできた方です。
夫は今も現役で忙しく、子どもたちはすでに独立。気づけば一人の時間がほとんどに。
「誰とも会話しないまま一日が終わるのが普通になっていました」
テレビを見ていて笑ったことも、買い物中に見つけた珍しい野菜も、
話す相手がいないことで次第に“反応する気持ち”が薄れていくのを感じていたといいます。
● 雑談グループとの出会い
そんな中、偶然見つけたのが「雑談好きさんいらっしゃい」というSNSのグループ。
ルールは一つだけ──「なんでもいいから、ひとこと書いてみよう」。
最初は見るだけでしたが、「今日は雨。洗濯物が乾かないですね~」という投稿に
「うちもです!浴室乾燥フル稼働です(笑)」と返したことがきっかけで、Cさんの日々が変わり始めました。
● 何気ない会話が“嬉しい時間”になる
この雑談グループでは、特別なテーマも不要。
「スーパーでたけのこ安かった!」
「夜のニュース見ましたか?」
「最近コーヒーにハマってます」
そうした気軽な書き込みに、「それ分かる」「うちも同じです!」という反応が返ってきます。
「家族には話せないことも、ここなら気軽に話せるんです」
● 「話す」ではなく「気軽につぶやく」感覚
Cさんが気に入っているのは、「ちゃんとした会話をしなきゃ」というプレッシャーがないこと。
- 返事がなくても気にならない
- 無理に毎日書かなくてもいい
- 好きなときに見て、好きなときに返せる
「ラジオをつけっぱなしにしているような心地よさがあります」
● “ちょっとだけ話す”ことで、心が軽くなる
Cさんは、以前よりもテレビを見て笑う回数が増えたといいます。
「この話、グループで言ってみようかな」と思うだけで、
何気ない日常にちょっとした彩りが加わるからです。
また、生活リズムにもいい影響が。
「朝にひとこと書き込む」ことで、自然と起きる時間も早まり、
一日を前向きにスタートできるようになったそうです。
● “仲間”は、友達じゃなくていい。共感できる誰かがいれば。
「友達」と呼べるほど深くなくても、同じ温度で話せる誰かがいるだけで、
日々の孤独感はやわらいでいきます。
「“誰かに話せる”って、こんなに大事なことだったんですね」
Cさんの言葉からは、「つながり」のかたちは思っているよりもずっと身近にある、
そんなことを教えてくれます。
【図解】SNSで仲間を見つけた人の共通点とは?
SNSを通じて“仲間”を見つけた60代の方々には、ある共通点が見られました。ただアプリを使っただけでなく、少しの工夫や心構えによって、つながりを深めるきっかけが生まれています。
以下は、SNSで仲間づくりに成功した人たちへの聞き取りをもとにまとめた、主な特徴と変化です。
■ 図1:仲間ができた人が実際にやっていた行動(複数回答・上位5つ)

行動内容 | 実施割合 |
---|---|
コメントする | 68% |
日記を読む | 61% |
雑談に参加 | 55% |
プロフィールを更新 | 47% |
趣味の投稿を見る | 40% |
→ 受け身ではなく、自分から軽く動くことが第一歩。
■ 図2:つながりを感じたきっかけ(単一回答)

グラフ化すると次のような傾向が見られます。
- 雑談・日常の話:42%
- 趣味の話題:29%
- 地元の話:12%
- 同年代としての共通感覚:9%
- 相談・励まし合い:8%
→ 特別な話題よりも「なんてことない会話」が仲間意識の芽。
■ 図3:仲間ができてからの気持ちの変化

感じた変化 | 割合 |
---|---|
孤独感が減った | 56% |
楽しみが増えた | 49% |
気持ちの安定・前向きさが出た | 38% |
新しい情報や刺激を得られた | 25% |
他人に優しくなれた、気配りが増した | 18% |
→ 小さな“つながり”が、日常と心に温度をもたらしている。
▼ まとめ:仲間づくりに大切な3つのこと
- 自分から少しだけ動くこと
(あいさつ、いいね、投稿など) - 会話のきっかけは日常の中にある
(趣味・雑談・昔話・季節の話題) - 相手の反応を焦らず待つ余裕
(距離の縮まり方は人それぞれ)
「仲間」は探すのではなく“育っていく”もの
はじめから「仲間」を見つけようとしなくていい
「仲間がほしい」と思ってSNSを始めたはずなのに、思ったような関係が築けずに悩んでしまう――そんな声は少なくありません。
しかし、多くの中高年ユーザーの体験から見えてくるのは、「最初から仲間を求めすぎないほうが、結果的に良いつながりが育つ」ということです。
気の合う相手との関係も、はじめは「ちょっとしたコメントのやりとり」や「日常のつぶやき」など、さりげない一歩から始まっています。
最初から深い関係を目指すのではなく、“続けられる関わり方”を意識することが大切です。
関係性は「積み重ね」で深まる
SNSやチャットアプリで出会った人と仲間になるには、「定期的に話す」「相手の投稿に反応する」「自分のことも少しずつ話してみる」といった、ゆるやかな関わりが鍵になります。
たとえばある60代女性は、毎朝「おはよう」と書き込むことから始まり、数か月後にはそのメンバーでグループ通話をするまでに発展したそうです。
このように、つながりは一気にできるものではなく、小さな安心と信頼を積み重ねていく中で“自然と育つもの”だと言えるでしょう。
SNSは“育てる場所”と考えてみる
「SNSで仲間を作る」のではなく、「SNSで関係を育てる」という視点を持つと、焦らずに楽しむことができるようになります。
返信がなくても気にしない、反応が薄くても落ち込まない、そうした“ゆるさ”を受け入れることで、長く続けられる習慣になります。
気づけば、自分の何気ない投稿に「わかる」「それ私も!」とコメントしてくれる人たちが現れ、知らぬ間に“仲間”と呼べるような存在ができている。
それが、今の時代ならではのあたたかなつながり方なのです。