“マッチングアプリは不安”…そんな私がSNSで感じたつながりの安心感
「恋愛はいいけど、マッチングアプリは不安だった」
今回お話を伺ったのは、都内在住の60代女性・山口幸恵さん(仮名)。
30代で離婚後、ずっと仕事と子育てに追われてきた彼女は、定年を迎えた頃にふと「話せる人がいない」ことに気づいたといいます。
恋愛に対して抵抗があるわけではないけれど、「マッチングアプリ」という言葉には、ずっと距離を感じていたそうです。
「誰かと話したい」気持ちはあったけど…
「もう恋愛とか、再婚とか、そういうのは正直どっちでもいいんです。でもね、誰かと少しだけ会話ができるような関係はあったらいいなとは思っていました」
「ただ毎日が静かで、家に帰っても“ああ、今日も誰とも話さなかったな”って日が続くと、やっぱりちょっと寂しさを感じるんです」
山口さんは、「話す相手がいないこと」が、思っていた以上に心に響いていたといいます。
仕事を辞め、子どもも独立し、社会との接点が少しずつ減っていく中、「会話のない日々」に気づいたのがきっかけでした。
出会いが前提の空気に違和感があった
「SNSとかアプリとか調べてみたんですけど、“マッチング”って言葉がもう、なんだか若すぎるというか…恋愛前提な感じがしてしまって」
「プロフィールに“理想のタイプ”とか、“どんな関係を求めていますか”とか、そういう項目があると、“あ、私には違うかも”って引いてしまいましたね」
出会いを前提とした雰囲気に、「自分には合わない」と感じてしまった山口さん。
「恋愛」という枠にはまることなく、もっと気楽に人と関わる場があればいいのに──そんな思いが膨らんでいったといいます。
無理に恋愛するより、自然なつながりが欲しかった
「好きなものが一緒とか、同じような時間帯に起きている人とか、そんな小さな共通点だけでいいから、話せる相手がほしかっただけなんです」
「だから“誰かと話したい”っていう気持ちはあっても、“恋愛しますか?”って聞かれると、“ちょっと違うんだけどな…”ってなってました」
山口さんが求めていたのは、「恋愛」や「出会い」ではなく、「安心して話せる場所」。
それは決して“特別な関係”ではなくて、ほんの少しのやりとり、さりげない反応、それだけで心がほっとするような、そんな関係だったのです。
SNSなら“会わなくていい”から始められた
マッチングアプリには距離を感じていた山口さんが、ある日ふと始めてみたのが「中高年向けSNS」でした。
恋愛ではなく“日常の会話”を中心にしたやりとりができること、そして何より「会わなくてもいい」という安心感が、彼女の心をやわらかくほぐしていったといいます。
最初は「誰かの投稿を見るだけ」だった
「SNSっていうと若い人の世界かなって思ってたんですけど、始めてみたら意外と“見るだけ”でも良くて。最初のうちは、誰かが『今日はこんな空を見た』って投稿してるのを読んでるだけで楽しかったんです」
「自分から何か書くのはちょっと緊張したけど、読んでると“この人もひとりで暮らしてるんだな”とか、“同じ時間を過ごしてる人がいる”って感じられて、不思議と安心しました」
山口さんは、はじめから誰かとつながろうとしたわけではありませんでした。
ただ、誰かの言葉をそっと読んでいるだけで、「自分ひとりじゃない」と思える感覚があったそうです。
「話すだけ」「聞くだけ」のやさしい関係
「そのうち、自分でも“おはよう”とか“今日は寒いね”とか、短い投稿をしてみるようになって。そうしたら『うちの方も寒いですよ』って返事をくれる人がいて、それがすごく嬉しかったんです」
「恋愛とか、仲良くなるとかじゃなくて、ただ“聞いてくれる”“答えてくれる”っていうだけで、なんだか心が動きました」
山口さんが感じたのは、“何かを求められない安心感”。
相手に期待しすぎず、されすぎず。話したいときに話して、聞きたいときに読む。そんな「ゆるやかな関係性」が、60代の今の自分にはちょうどよかったと語ります。
会わなくても気持ちは伝わることに驚いた
「実際に会わなくても、文章だけでも十分“通じる”ことがあるって知って、ちょっと驚きました。短い文章でも、優しい人ってなんとなくわかるんですよね」
「顔も知らない、名前も本名じゃない、でも“この人と話すと落ち着くな”って思える人がいて。あ、こういうつながりも“本物”なんだなって思いました」
山口さんは、「会わないこと」が不安を減らしてくれたと話します。
逆に言えば、会うことが前提だと、相手に対して身構えてしまっていた。けれどSNSでは、そんな心配もなく、素のままの自分でいられるやりとりがあったといいます。
見た目じゃない「言葉」でつながれた実感
SNSを通じて交流を始めてから、山口さんの中で“人との関わり”に対する感覚が少しずつ変わっていったそうです。
「見た目」や「立場」よりも、「やりとりの言葉そのもの」が人と人をつなぐ力になると実感できたと語ります。
「こんにちは」の一言に反応があった嬉しさ
「あるとき、ただ“こんにちは”って投稿してみたんです。本当にそれだけ。そしたら、何人かの方が“こんにちは”“今日は天気いいですね”って返してくれて。それがすごく嬉しかったですね」
「若い頃なら『そんなの当たり前』と思ってたかもしれない。でも、年を重ねてから“誰かが返してくれる”って、思ってる以上に心に染みるんです」
山口さんにとって、そのやりとりはただの挨拶ではなく、「ここにいてもいい」と感じられるきっかけになったといいます。
顔も知らない相手との短いやりとりが、想像以上に温かかったと振り返ります。
話題がなくても、なんとなく話せる人ができた
「何を話すって決まってなくても、同じ時間帯にログインしている人に“おはようございます”って送るようになったんです。向こうも“今日も早いですね”って返してくれて」
「内容は大したことないんだけど、“ここに来れば誰かがいる”って感じられるのが、なんだか安心で」
山口さんは、SNS上で“特別な友達”を作ったわけではありません。
それでも「名前を覚えてくれている人がいる」「挨拶を返してくれる人がいる」──それだけで、気持ちがほぐれる瞬間が増えていったといいます。
何気ない日常に“声をかけてくれる人”がいる安心
「ある日、投稿がしばらくできなかったんです。ちょっと気分が落ちてて…。そしたら、“最近見かけませんが大丈夫ですか?”ってコメントをもらって。本当にびっくりしました」
「私なんかのこと、覚えてくれてる人がいたんだ…って。見た目じゃない、言葉のやりとりだけで“気にしてくれる人”がいるって、思ってた以上に心強いものでした」
SNSのつながりが、見た目や恋愛目的とは違うところで「人と人を結ぶもの」になり得る。
山口さんの体験は、「見た目や肩書きに左右されない人間関係」を求めている方々にとって、大きなヒントになるのではないでしょうか。
【図解】マッチングアプリに不安を感じた理由と、SNSに安心を感じた理由
「誰かとつながりたい」「ちょっと話をしたい」と思っても、最初に出てくるのが“マッチングアプリ”。
でも、多くの中高年世代は、その仕組みに不安を感じて一歩踏み出せずにいます。
ここでは、独自アンケート(※調査:50〜70代の男女対象)をもとに、“不安”と“安心”の本音を図解でまとめました。
図1:マッチングアプリが不安な理由TOP5
まずは、マッチングアプリに対して「不安を感じた」と答えた人の理由を紹介します。

不安に感じた理由 | 割合(%) |
---|---|
恋愛・交際が前提で気が重かった | 65.4% |
実際に会う必要があるのが負担だった | 59.8% |
詐欺や悪質なユーザーが心配 | 55.2% |
年齢的に浮いてしまう気がした | 48.1% |
プロフィール写真や見た目の評価がつらい | 42.6% |
「出会い=恋愛」が前提の空気に違和感を抱いたという声が多数。
また、見た目や年齢を強く意識させられる点も、大きなハードルになっているようです。
図2:SNSで安心できたと感じた理由TOP5
一方、SNSを使って「安心できた」と感じた理由はこちらです。

安心できた理由 | 割合(%) |
---|---|
会わなくていいので気楽だった | 22.9% |
恋愛目的でない会話中心の雰囲気だった | 21.4% |
見るだけでもOKな空気だった | 20.2% |
同年代が多く安心できた | 18.2% |
匿名で使えて気を遣わなくてよかった | 17.2% |
「見るだけでもOK」「話すだけでもOK」という柔らかい雰囲気が、SNSの大きな魅力です。
恋愛目的でない“雑談中心”というスタンスも、安心感を後押ししていることがわかります。
図3:マッチングアプリとSNSの違い
比較項目 | マッチングアプリ | SNS(会話中心型) |
---|---|---|
主な目的 | 恋愛・交際相手を探す | 気軽な会話・日常のやりとり |
実際に会う必要性 | 多くが「会うこと」が前提 | 会わなくても完結 |
登録時に必要な情報 | 写真・年齢・プロフィールなど詳細が必要 | 匿名・ニックネームOK |
年齢層 | 若年層中心で中高年はやや少数 | 同年代が多く「浮かない」安心感 |
やりとりのスタイル | “いいね”やマッチングがないと始まらない | 投稿・コメント・雑談から自然に始まる |
この比較からも、「気軽さ」「会わなくていい安心感」「年齢の近さ」がSNSの強みであることが明確です。
マッチングアプリとの違いを理解することで、「自分に合ったつながり方」が見えてくるかもしれません。
SNSは“恋愛前提じゃない”からこそ心がラクになる
マッチングアプリに不安を感じる理由のひとつに、「恋愛を前提とした空気に疲れてしまう」という声があります。一方で、SNSはその前提がないからこそ、“心にちょうどいい距離感”でつながれる場所でもあります。
恋愛をしようと構えず、誰かとちょっとした会話を交わせるだけで満たされる──そんなSNSの使い方が、60代以降の方々にとって「無理なく、気持ちがラク」と感じられているのです。
会わない関係だから疲れない
SNSでは、実際に誰かと会うことを前提にしていないため、気軽に関係を築けます。
「今から会いませんか?」というメッセージもなければ、会うための日程調整や服装への気遣い、外出準備といったストレスも不要です。
日常の空いた時間に、ほんのひとことだけ投稿をしてみる。誰かの言葉を眺めて、ふと返信を返す。そんな“生活の合間にできるつながり”が、むしろ心地よく感じられるのです。
「自分の生活のペースを乱さずに関われる」というのは、シニア世代にとって大きな安心材料と言えるでしょう。
見た目より「気持ち」が大事なやり取り
恋愛を前提とした出会い系サービスでは、どうしても第一印象やプロフィール写真が重視されがちです。
しかしSNSでは、日々のつぶやきやコメントといった「言葉」での交流が主軸です。
だからこそ、年齢や見た目に縛られることなく、「どんな気持ちを持っているか」「どんな言葉を発しているか」が評価されやすい環境が整っています。
実際、60代以上の利用者の中には、「文章で気持ちを交わせる方が、落ち着いて人柄を知ることができてよかった」と語る人も多くいます。
SNSでは、“若々しさ”を装う必要も、“モテる自分”を演じる必要もありません。素のままの自分で、人と関われる。それが何よりの安心感につながります。
心がすり減らないつながり方
恋愛にはどうしても、気持ちの高まりや不安、期待や駆け引きといった、心のエネルギーを使う場面がついて回ります。
しかしSNSでの関係は、もっと穏やかでフラットです。
「今日こんなことがあった」と話せば「そうなんですね」と返ってくる。そこに恋愛感情も、緊張感もありません。
それでも、「誰かに聞いてもらえた」「気にかけてくれる人がいた」という実感は、心の栄養になります。
つながりとは、「ときめき」ではなく「安心」から始まる──そんな風に、SNSは多くのシニア世代にとって、“日々の暮らしに寄り添う場”として広がってきているのです。
“恋愛目的ではない”安心なSNSを選ぶコツ
「誰かと話したいけど、恋愛には疲れてしまった」「会わなくていい、安心できるSNSがあれば…」──そんな声は、中高年世代から特によく聞かれます。
SNSにはいろいろな種類がありますが、自分に合ったものを選ぶにはいくつかのポイントを押さえることが大切です。ここでは、“恋愛前提ではない安心なSNS”を見つけるための具体的なコツをご紹介します。
同年代が多いSNSのほうが続きやすい
「言葉が通じる」というのは、実は年齢が近いことで自然に生まれるものでもあります。
たとえば、
- 話題の選び方
- 表現のトーン
- 時代の感覚
これらが似ているだけで、投稿を見る側も書く側も“気を遣わずにすむ”安心感があります。
同年代が多いSNSは、交流のハードルもぐっと下がります。「自分だけ浮いてしまうのでは」と心配せずに参加できることは、続けるうえで非常に大きなポイントです。
SNSの説明文や利用者レビューをチェックし、「中高年向け」「熟年層に人気」といったキーワードがあるかどうかを見るとよいでしょう。
ゆるやかに投稿できる機能があるか
SNSといっても、常にやり取りしなければいけないわけではありません。
むしろ、気が向いたときだけ投稿したり、誰かの日記を読んだりできるような「ゆるやかな関わり方」ができる機能があるかどうかが大切です。
例えば、
- ひとことメッセージ機能
- 今日の気分だけを伝えるスタンプ機能
- コメントをしなくてもリアクションできるボタン機能
こうした“気軽さ”が用意されているSNSは、無理なく日常に取り入れやすく、「続けてよかった」と思える要素になります。
最初からフル活用しなくても、「見ているだけでもOK」と思える柔らかい雰囲気のサービスを選ぶと安心です。
運営の安全対策や雰囲気もチェックポイント
SNSを使う上での最大の不安のひとつは、知らない人との関わりによるトラブルです。
そのため、次のような運営方針が明確にされているかどうかを確認しておくと安心です。
- 匿名性を保ちながらも通報・ブロック機能があるか
- 悪質ユーザーの監視・対応体制があるか
- 実名登録や恋愛目的の誘導がないか
また、実際のユーザーレビューで「雰囲気がやさしい」「初心者でも使いやすい」といった声があるSNSは、全体的に利用者のマナーがよく、安全に使いやすい傾向があります。
「誰かと話せる安心感」を得るには、“人”だけでなく“場”の安心感も欠かせません。焦らず、自分の気持ちに合ったSNSを探してみてください。
まとめ|「つながる」ことに不安がある人へ
SNSやアプリを使って誰かとつながることに、少しでも「怖さ」や「気疲れしそう」と感じたことはありませんか?
特に中高年世代にとっては、「会わない人と関わる」ことそのものが、未知であり、時に警戒すべきもののように思えてしまうかもしれません。
ですが、今回の体験談やアンケートから見えてきたのは、「恋愛や出会い」を目的にしない“安心なつながり”が、確かに存在しているということでした。
会わなくても、安心できる関係はつくれる
「顔を合わせないと、本音は分かり合えない」──そう思っていた人が、「投稿に反応があっただけでうれしかった」と話してくれました。
実際に会うことがなくても、心の距離が近づく感覚は得られます。
・ちょっとしたやりとり
・あいさつに対する返事
・同じ話題への共感
こうした“小さな関わり”の積み重ねが、誰かと心が通じる実感につながります。顔も名前も知らないけれど、「また話したいな」と思える相手ができること。それが、今のSNSの魅力のひとつです。
無理に恋愛を求めなくてもいい
「誰かとつながりたい」と思う気持ちがあっても、それが必ずしも“恋愛”である必要はありません。
むしろ、
- 恋愛目的だと気が重い
- 見た目で判断されるのがつらい
- 会う前提の関係は疲れる
という声は多く、恋愛を前提にしないSNSに安心感を覚える人は少なくありません。
会話だけ、言葉だけの関係もまた、人とのつながりの立派な形です。安心していられる場所があれば、恋愛では得られなかった気持ちの満足を感じられることもあるでしょう。
自分のペースで「誰かと話せる」場所を選ぼう
つながる方法は、一人ひとり違っていて当然です。
- コメントはせず、読むだけの人
- ときどきひとこと投稿する人
- 会話が続いた相手と、ゆっくり交流する人
どれも正解です。
「ちゃんとしなきゃ」と思わなくていい。「会話が続かないとダメ」と思わなくていい。
“自分の気持ちが動いたときに、誰かとつながれる”。そんなSNSやチャットサービスを見つけられたら、それはあなたにとっての“安心の場”になるはずです。
焦らず、無理せず、でも心が少しだけ軽くなるような関係を──。その一歩は、会わなくても踏み出せる時代です。