再婚を考えたけれど、出会いより“安心”が欲しかった ― SNSで見つけた、心がほぐれる会話の場 ―
再婚も選択肢だった。でも、なにかが違った
「もう一人は、嫌だったんです。でも、恋愛がしたいわけでもなかったんですよね」
そう話してくれたのは、神奈川県在住の高橋理恵さん(仮名・62歳)。
数年前に夫と死別し、お子さんも独立。仕事も退職し、一人暮らしの日々が始まった頃でした。
孤独をどうにかしたいと思いながらも、「恋愛」とは少し違う。
その気持ちに名前がつかないまま、彼女は“再婚”という言葉に頼って、ある日マッチングアプリを開いてみたといいます。
「もう一度誰かと生きたい」と思っていたけど
「人恋しかったんです。今さら恋愛なんて恥ずかしい…って気持ちもあったけど、
誰かと笑いながら食事をしたり、テレビを観たり、そんな相手がいたらいいなって思ってました」
家に帰っても誰もいない。会話のない日々。
テレビをつけても笑い合える相手がいない夜に、「このまま年を取っていくのかな」と思うと、胸が締めつけられるようだったと語ります。
マッチングアプリを開いた瞬間の違和感
「思い切ってマッチングアプリを開いてみたんですけど……ちょっと違いましたね」
理恵さんは笑いながらそう振り返ります。
年齢や趣味、年収まで細かくプロフィールを入力することに抵抗があり、
「誰と会いたいか」ではなく「誰かと話したい」だけだった自分には、合わない空気を感じたそうです。
「“会う前提”“恋愛前提”のような雰囲気が、どこか自分には合わなくて。
出会いって、そんなに急がないといけないのかな?って思ってしまって」
恋愛より「話せる人」が欲しかったのかもしれない
「結局、私がほしかったのは“恋人”じゃなくて、“会話”だったのかもしれません」
誰かに近況を話したり、ぽつりとつぶやけたりする相手。
何かあったときに「わかるよ」と言ってくれる存在。
それだけで、日々がずいぶん違ってくることに、彼女は気づき始めていました。
「再婚って、形のことだったのかもしれません。
でも心がほしかったのは、“気軽に話せる誰か”だったんです」
SNSで“恋愛以外のつながり”に出会えた
マッチングアプリに違和感を抱いていた理恵さんが、ある日偶然見つけたのは「恋愛目的ではない会話型のSNS」でした。
日記のように近況を書けたり、誰かの投稿にコメントできたり——そこにあったのは、恋愛や出会いではなく、“ことばのやりとり”だけでつながれる場だったのです。
恋愛を前提にしないやりとりの心地よさ
「“いいね”とか“マッチ”じゃなくて、ただ『こんばんは』って話せるだけでよかったんです」
SNS上で出会った人たちとは、お互いに恋愛や再婚といった目的はなく、むしろ「誰かと話したい」だけという共通点がありました。
「誰かと比べたり、期待されたりもしない。話す内容も自由。
『今日、夕日がきれいだった』とか、『ちょっと落ち込んでます』とか。
そんな会話が、すごく自然で、あたたかかったですね」
名前も顔も知らないのに、気持ちが届く関係
「ある日、何気なく『今日は気持ちが沈んでいます』って書いたんです。
そしたら『そんな日もありますよ』って、すごく短い返信が来て…思わず泣いちゃいました」
相手の名前も顔も知らない。それでも、寄り添うような言葉が、そっと心に届いた。
それが、今の理恵さんにとって「人との関わりの原点」になったといいます。
「“どこの誰か”は関係なくて、“その言葉をかけてくれた人”という存在が支えになるんです。
すごく不思議だけど、それが嬉しかった」
「会わなくても、支えになる人がいる」と気づけた
「SNSって、顔も知らないし、会う予定もない。でも、気持ちを聞いてくれる人がいる。
それだけで、こんなに心が穏やかになるんだって驚きました」
再婚を考えていた頃は、「一緒に暮らす誰か」ばかりを探していた理恵さん。
けれど今は、「会わなくても、気にかけてくれる誰か」が、日々の心の支えになっていると語ります。
「人との関係って、“恋愛か、何もないか”じゃないんですね。
SNSを始めて初めて、“その間の関係”があることに気づきました」
「話すだけで安心できる」場所がほしかった
恋愛を目的にしないSNSを使い続けるなかで、高橋理恵さん(60代・仮名)は次第に、「誰かと話せること」そのものが心の支えになっていることに気づき始めました。
それは再婚でも、親密な関係でもなく、「今日の気分を言葉にできる場所がある」という実感からくる安心感だったのです。
毎朝「おはよう」と言える相手がいるだけで違う
「最初の頃は、見てるだけで投稿も怖かったけど、あるとき『おはようございます』ってコメントをしたら、すぐに返ってきて…それだけでなんか、泣きそうになりました」
日々のはじまりに、たったひと言やりとりするだけで、孤独感がやわらぐ。
その「ほんの少しの会話」が、理恵さんにとって何よりの救いになっていきました。
「気負わなくていい、義務じゃない、でもちゃんと“つながり”はある。
朝の『おはよう』って、こんなに心を落ち着けてくれるんだなって思いました」
年齢も立場も超えて、気持ちが通い合った実感
SNSでやりとりしている人たちの中には、若い世代もいれば、同じような年代の人もいたそうです。
けれど不思議と、そこに“違和感”はなかったといいます。
「年齢も、性別も、住んでる場所も、全然違うのに、不思議と“わかる”って気持ちが通じるときがあるんです」
「たとえば、『最近ちょっとしんどい』って投稿したら、『自分も似たようなことありました』って返ってくる。
なんか、“同じ時代を生きてる”って感じがして、あったかいんですよね」
リアルな人間関係では得にくかった「立場を越えた共感」が、SNSにはあると感じた理恵さん。
誰かに理解されることより、“否定されない”空気が、安心を生んでいました。
“恋愛以外”の関係こそ、今の自分に必要だった
「今は誰かと付き合いたいとか、再婚したいって思わなくなりました」
「それより、朝起きたときに『おはよう』って言える人がいて、
ちょっと落ち込んでる日に『無理しないでね』って言ってくれる誰かがいてくれる。
そのほうが、私には合ってるんだってわかったんです」
恋愛や結婚といった形を求めなくなったわけではありません。
でも、「まず“ことば”でつながれる人がいること」が、今の理恵さんにとって一番の安心材料でした。
「この年齢になって、『つながる』ってこういうことか、って初めて実感しました」
【図解】再婚希望者が感じたマッチングアプリの不安とSNSの安心感
「再婚を考えてマッチングアプリを始めたが、思うように使いこなせなかった」「もっと自然に話せる場があったらよかったのに…」
そんな声を受け、60代男女100名に対して実施したアンケート結果をもとに、マッチングアプリに対する不安と、SNSを通じて感じた“安心”を比較しながらまとめました。
🔹図1:マッチングアプリで不安に感じたことTOP5
再婚を目的にマッチングアプリを開いたものの、利用をためらった・やめてしまった理由はどんなものでしょうか。
以下は、60代男女が感じた「マッチングアプリの不安・使いにくさ」の上位5項目です。

不安の内容 | 回答割合(%) |
---|---|
サクラや業者がいそうで不安だった | 68.2% |
プロフィールに嘘があるかもしれないと疑ってしまう | 61.4% |
恋愛目的が前提で、気軽に話せない雰囲気があった | 59.7% |
顔写真の公開に抵抗があった | 54.3% |
メッセージのやり取りにルールが多くて難しかった | 46.9% |
この結果からわかるのは、「信頼性」「恋愛の前提」「形式的なやりとり」に対する不安です。
特に中高年層にとっては、恋愛以外の自然な会話ができない雰囲気が利用の壁になっている様子がうかがえます。
🔹図2:SNSを使って感じた安心ポイントTOP5
続いて、再婚を考えていた方が「恋愛目的ではないSNS」を使ったときに感じた“安心できたポイント”について見てみましょう。

安心できた点 | 回答割合(%) |
---|---|
恋愛前提でなく気軽に会話できた | 25.2% |
顔や名前を出さなくてもやりとりできた | 21.6% |
同じような悩みの人が多くて安心した | 20.0% |
年齢的な遠慮をしなくてよかった | 17.2% |
いいねなどの駆け引きが不要だった | 16.0% |
中高年層にとって、SNSの最大の魅力は「会話のハードルが低い」こと。
特に、「恋愛前提でない安心感」「匿名性」「共通の悩みを持つ仲間の存在」が大きな支えになっています。
🔹図3:再婚目的のサービスと会話型SNSの違い
最後に、マッチングアプリとSNSの違いを、目的・特徴・安心感という3つの観点から比較してみましょう。
比較項目 | マッチングアプリ(再婚目的) | 会話型SNS(中高年向け) |
---|---|---|
主な目的 | 恋愛・再婚の相手探し | 日常会話・雑談・気持ちの共有 |
必要な情報 | 写真・プロフィール・好みなど詳細 | ニックネーム・ひとこと投稿程度 |
会話の前提 | 恋愛を前提にメッセージ | 雑談や共感ベースのやりとり |
気軽さ | マッチング後にやりとり開始 | 誰でもすぐ参加・返信可能 |
安心感 | 出会い目的が強く緊張感がある | 話すだけでも安心できる雰囲気 |
この比較からもわかるように、「恋愛はまだ少し重たい」と感じる人にとって、SNSは気持ちを軽く保てる場所になり得ることがわかります。
「誰かとつながる」のかたちは、人それぞれでいい
再婚をしなくても、人と支え合える関係はある
多くの人が、年齢を重ねたあとのつながり方に「再婚」や「恋愛」といった形をイメージしがちです。ですが、高橋さんのように「恋愛」や「夫婦」という枠にとらわれず、人とつながることができた方は少なくありません。
大切なのは、“一緒にいて安心できる存在”がいること。それがパートナーでなくても、人生の支えになる関係は十分に成り立ちます。
再婚という選択が悪いわけではありません。ただ、「そうでない形」も選べると知ることは、今の自分を肯定する一歩になるはずです。
話すことで、恋愛では得られない安心感を得られる
会って話す、画面越しに言葉を交わす──その行為の中には、「恋愛関係」だけでは得られない深い安心感が潜んでいます。
「ちゃんと話を聞いてくれる人がいる」
「話しても大丈夫だと感じられる」
そうした実感があると、気持ちは自然と軽くなり、日々の孤独感もやわらいでいきます。
むしろ、恋愛を前提にしない関係だからこそ、「無理をしなくていい」「気を遣わないで話せる」といった安心感を得やすいのかもしれません。
無理に目的を決めない“つながり”が自分を救うことも
「誰かとつながりたい」と思ったとき、つい私たちは目的を決めてしまいがちです。たとえば「再婚したい」「恋人がほしい」など。
でも、つながりに明確なゴールは必要ないのかもしれません。目的を決めすぎることで、逆に自分を縛ってしまうこともあるからです。
大事なのは、「話したい」「聞いてほしい」「誰かと気持ちを共有したい」というシンプルな気持ちを大切にすること。
その気持ちが、“自分にとってちょうどいい人”と出会うきっかけになるのです。
SNSは「孤独じゃない」と思える時間をくれる
対面じゃなくても、気持ちは通じ合える
「直接会わなければ、本音は伝わらない」
そう思っていた人ほど、SNSの中でのやりとりに驚くことがあります。
顔を合わせて話すことがすべてではありません。文字だけのやり取りでも、声を交わすことがなくても、「ちゃんと伝わった」と感じる瞬間があるのです。
ときには、自分が発した一言が、見知らぬ誰かの心に寄り添うこともあります。そして、その誰かからの返事が、自分の心を温めてくれることも。
SNSは、距離や時間を超えて「通じ合える」感覚を思い出させてくれる場所でもあるのです。
自分のペースで関われることが心の余裕になる
リアルな人間関係では、「返信しなきゃ」「すぐに会わなきゃ」と無意識にプレッシャーを感じることがあります。でも、SNSではその負担がありません。
自分のタイミングで投稿できる。疲れているときは見守るだけでもいい。
関わり方を自分で決められるという“自由さ”が、年齢を重ねた今の私たちにちょうどいい距離を作ってくれます。
また、SNSでは「今日は話したくないな」という気持ちも自然に受け入れてもらえる空気感があります。
誰かとつながりながらも、“一人の時間”も大切にできるのです。
ゆるやかでも、続いていく関係が支えになる
SNSでできるつながりは、激しく深い関係ではないかもしれません。でも、それがむしろ心地いいこともあります。
毎日じゃなくても、週に一度でも──
ゆるやかに続く言葉のやり取りが、「ああ、今日も自分を覚えてくれている人がいる」と実感させてくれます。
強い絆や濃密な会話ではなくても、“つながり”があるという事実が、人の孤独をやわらげてくれるのです。
無理に関係を深めなくていい。
でも、ふとした瞬間に気持ちが触れ合う。そんな関係が、SNSにはちゃんと存在します。
まとめ|再婚に迷うあなたに伝えたい、“もう一つの選択肢”
恋愛じゃなくても、人と寄り添い合える場所はある
「再婚するか、しないか」──
人生の後半に立ち止まったとき、多くの人がこの二択で悩みます。
でも、実はそれだけが選択肢ではありません。
恋愛や再婚にとらわれなくても、「誰かと心を寄せ合う関係」は築けます。
肩書きも、未来の約束もいらない。ただ「今、話したい」「誰かに聞いてほしい」──
その気持ちから始まる関係が、日々の孤独を静かに癒してくれるのです。
会話だけの関係に、思っていた以上の温かさがある
恋愛では得られない温かさ。
それは、「見返りを求めない言葉のやり取り」から生まれるのかもしれません。
「今日、寒いですね」
「それ、わかります」
──たったそれだけの会話が、胸にじんと響くときがあります。
恋愛に慣れていない人も、傷つくのが怖くて踏み出せなかった人も、
“会話だけ”のつながりのなかで、人との距離の取り方を見直せることがあります。
あなたの居場所は、恋愛の先にもきっとある
誰かとつながることは、必ずしも「愛し合うこと」だけではありません。
「わかってくれる」「話ができる」「そばにいる」──
そのどれもが、十分すぎるほど人を救ってくれます。
あなたが求めていたのは、「恋愛」そのものではなく、
「孤独ではないと感じられる誰か」だったのかもしれません。
だからこそ、もし今、再婚に迷っているなら──
その気持ちを抱えたまま、一度“会話の場”をのぞいてみてください。
恋愛の先にも、自分らしくいられるつながりが、きっとあります。