孤独死が不安だった60代男性が語る|人と話すだけで変わったこと

体験談・コラム

孤独死が不安だった60代男性が語る|人と話すだけで変わったこと

  1. 「誰にも気づかれずに死ぬのでは」と思った瞬間
    1. ふとした拍子に「倒れても誰にも知られないかも」と思った
    2. 近所づきあいもなく、声をかけられることがなかった
    3. 「孤独死」という言葉が他人事じゃなくなってきた
  2. 話し相手がいない日々が、心をむしばんでいた
    1. 会話のない生活が「思考のループ」を生んでいた
    2. 何をしても気力が湧かず、テレビすら楽しめなかった
    3. 誰かと“会話”するだけで違うとわかっていても難しかった
  3. SNSでの「おはよう」のやりとりが、生きる実感に
    1. はじめは「見るだけ」で十分だった
    2. 「おはよう」に「おはよう」が返ってきた感動
    3. 小さな会話が「生きている実感」をくれた
  4. 【図解】60代男性が抱える孤独の実態とSNSの影響
    1. 図1:60代男性が不安に感じる「孤独死」のきっかけTOP5
    2. 図2:SNS利用前後での気持ちの変化
    3. 図3:中高年男性にとって続きやすいSNSの特徴(比較表)
  5. 「話すだけ」で気持ちが変わる理由
    1. 話せるだけで“孤独感”はやわらぐ
    2. 声に出す・文字にすることで思考が整理される
    3. 他人との接点が「自分の存在」を確認させてくれる
  6. SNSが「孤独死の不安」をやわらげる“日常の工夫”に
    1. 会わなくていい交流だからこそ始めやすい
    2. 自分のペースで続けられる「習慣化」が安心につながる
    3. 声をかけ合える“ゆるいつながり”が生きる支えになる
  7. まとめ|「誰かと話す」を始めるのに、遅すぎることはない
    1. 大げさなことをしなくても、SNSならできる
    2. 「話せる誰か」がいるだけで、人生の色が変わる
    3. 今、スマホひとつからつながれる「小さな安心」を

「誰にも気づかれずに死ぬのでは」と思った瞬間

「孤独死って、もっと年上の人の話だと思ってたんです。でも、60代に入って一気に他人事じゃなくなりました」

そう話してくれたのは、埼玉県在住の森田進さん(仮名・62歳)。
定年退職を機に一人暮らしを始めて数年が経ちます。子どもは独立し、離婚歴あり。現在は連絡を取り合う家族も少なく、日々を淡々と過ごす生活のなかで、ある日ふと“ある想像”が頭をよぎったと言います。


ふとした拍子に「倒れても誰にも知られないかも」と思った

「ある日、朝起きたときに、胸の奥に変な違和感があって……一瞬『これ、今ここで倒れても誰も気づかないな』って思ったんです」

そんな感覚を持ったのは初めてだったと森田さんは語ります。
以前なら「大げさだな」と笑い飛ばしていたことが、いざ自分のこととして実感されるようになったのです。

「スマホもあるし、病院もある。でも“誰かに気づかれる関係”って、そう簡単には作れないんですよね」


近所づきあいもなく、声をかけられることがなかった

「昔は“お隣さん”って当たり前のように顔を合わせてたけど、今は名前も知らないし、会釈すらないこともある」

ご近所とのつながりが希薄な現代。森田さんも例外ではありませんでした。
買い物もネット、連絡もLINEやメールで済む今、物理的な便利さが“人間関係の空白”を深めてしまう感覚があったといいます。


「孤独死」という言葉が他人事じゃなくなってきた

「ニュースで“誰にも看取られずに亡くなった人”の話を見ても、以前は“かわいそうに”って思うだけだった。でも今は、“自分もこうなるかも”って思っちゃうんです」

森田さんは、「孤独死」という言葉のリアリティが日に日に増していったと語ります。

「もちろん、死ぬこと自体は避けられない。でも、“誰にも知られないまま”っていうのが、一番怖いんですよ」

この不安をきっかけに、森田さんは「誰かとつながっていたい」という気持ちを強く意識するようになりました。


話し相手がいない日々が、心をむしばんでいた

「誰にも気づかれずに死ぬかもしれない」——そんな不安が心に巣くってから、森田さんの日常は少しずつ変わっていったといいます。
大きな事件やきっかけがあったわけではありません。けれど、「誰かと話す」ことがない生活は、気づかぬうちに心をむしばんでいたのです。


会話のない生活が「思考のループ」を生んでいた

「考える時間が増えた分、悪いことばっかり浮かぶようになってきたんです」

定年後、仕事の人間関係が一気に途絶え、話す相手もいない日々。最初は「気楽でいい」と思っていたものの、気がつけば、些細な悩みが何度も頭を巡るようになったといいます。

「例えば、ちょっと咳が出ただけでも『大きな病気だったらどうしよう』って不安になって、でも誰にも話せなくて、結局ずっとそのまま考えてしまう。出口のない思考のループです」


何をしても気力が湧かず、テレビすら楽しめなかった

「趣味の映画も、なんだか集中できなくなって。テレビをつけても、ただ画面が流れてるだけって感じで」

かつては週に数本レンタルビデオを楽しんでいたという森田さん。けれど、誰とも感想を語り合う相手がいないと、興味や関心も薄れていったそうです。

「好きなことをしてても、反応がないと、どこかむなしいんですよね。“一人”って、それだけで楽しさを奪うことがあるんだなって」


誰かと“会話”するだけで違うとわかっていても難しかった

「誰かと話せば楽になるってことは、頭ではわかってるんですよ。でも、だからといって簡単に誰かに電話できるわけじゃない」

「元気?」と電話する相手もいない、ましてや新しく知り合いを作るのも気が引ける。
「話したいけど、話せない」——その距離感こそが、一番つらかったと森田さんは振り返ります。

「話しかけるきっかけって、年をとるほど難しくなるんですよ。若いときの“ノリ”なんて、もうできないですから」


SNSでの「おはよう」のやりとりが、生きる実感に

森田さんがSNSを使い始めたのは、ある日ネット検索で偶然見つけた「中高年向けの会話アプリ」がきっかけでした。
それまで、「SNSなんて若い人がやるもの」と距離を感じていたそうですが、“会わなくても誰かと話せる場所”があることに、ひとかすかな希望を抱いて登録してみたといいます。


はじめは「見るだけ」で十分だった

「最初は、話すなんてとてもできなかったです。ただ他の人の書き込みを読んでるだけでした」

誰かが投稿した日常の一言、季節の写真、趣味の話。森田さんはそれを“読むだけ”の日々を数週間続けていたそうです。

「でも、読むだけでも不思議と安心できたんですよね。『誰かが今日も生きてる』って、それを感じるだけで少しほっとしてたんだと思います」


「おはよう」に「おはよう」が返ってきた感動

ある日、森田さんは意を決して短い投稿をしてみました。

「ほんとに、ただ“おはようございます”って一言だけ。返事が来るなんて期待してなかったです」

ところが、その投稿に数分後「おはようございます」「今日も元気ですか?」というコメントがいくつも返ってきたといいます。

「たったそれだけなのに、涙が出そうなくらいうれしかったんです。誰かが、自分の言葉を受け取ってくれた。それだけで、こんなに心が動くんだって驚きました」


小さな会話が「生きている実感」をくれた

「毎朝、おはようって言える相手がいる。それがあるだけで、1日がちゃんと始まる気がするんですよ」

森田さんは、少しずつ他の人の投稿にもコメントをするようになり、同じように定年後に孤独を感じていた仲間とやりとりを交わすようになりました。

「内容はたいしたことじゃないんですよ。“今日は寒いね”とか、“猫が可愛かった”とか。でも、そういうやりとりがあると、確かに今日を生きてるって思える。SNSって、こんなふうに人を救うこともあるんだなって思いました」


【図解】60代男性が抱える孤独の実態とSNSの影響

SNSは“若者向けのもの”と思われがちですが、近年では60代以上の男性ユーザーの増加も見られます。
実際、孤独感や不安を抱える中高年男性にとって、SNSが「思っていた以上に安心できた」と語られることが増えてきました。

ここでは、アンケート調査をもとに、60代男性が抱える孤独感とSNS利用による変化をデータで見ていきましょう。


図1:60代男性が不安に感じる「孤独死」のきっかけTOP5

60代男性が「自分もいずれ孤独死してしまうのではないか」と感じるようになったきっかけを聞いた結果、次のような要因が上位に挙げられました。

・体調を崩したとき、誰にも連絡できなかった
・何日も誰とも話していないことに気づいた
・ご近所や知人との付き合いがなくなっていた
・家族と疎遠になっていた
・近所で孤独死のニュースを見た

こうした日常の中で、ふとした瞬間に「自分は一人だ」と痛感するケースが多く、それが孤独死への不安をリアルに感じるきっかけになっているようです。


図2:SNS利用前後での気持ちの変化

続いて、SNSの利用前と利用後で、心の状態にどのような変化があったかを尋ねました。

注目すべきは、「不安感」「孤立感」といったネガティブな感情が明らかに減少し、「安心感」「人とのつながり感」が大幅に増加している点です。

とくに「毎日誰かとやり取りしている」という実感が、自分は“社会から切り離されていない”という認識につながり、孤独死の不安を和らげる要因になっていることがわかります。


図3:中高年男性にとって続きやすいSNSの特徴(比較表)

最後に、SNSを継続的に使えている人たちが共通して挙げた「続きやすさのポイント」をまとめたものが以下の表です。

特徴続けやすさへの影響
顔出し・実名不要で気軽に始められるハードルが下がり、最初の一歩が踏み出しやすい
時間に縛られない自由な使い方自分のペースで交流できて気疲れしない
共通の話題(趣味・年代)がある話しやすく、孤立感が薄まる
会話だけで完結できる恋愛や出会いのプレッシャーがなく安心できる

これらの特徴があるSNSほど、**「続けられる」「気が楽」「心が落ち着く」**といった声が多く寄せられました。


「話すだけ」で気持ちが変わる理由

SNSやチャットを通じて「会話だけ」のつながりを持ったことで、多くの人が心の変化を感じたというデータが集まりつつあります。では、なぜ「話すだけ」で気持ちが軽くなったり、孤独がやわらいだりするのでしょうか。心理的な側面から、その理由をひもといていきます。


話せるだけで“孤独感”はやわらぐ

人間には「誰かに存在を認識されたい」「受け入れられたい」という根源的な欲求があります。誰とも会話を交わさない日々が続くと、その欲求が満たされず、孤独感や疎外感が強まっていきます。
逆に、たとえ深い内容でなくても「おはよう」「今日は暑いですね」といった何気ないやりとりがあるだけで、「自分は一人ではない」と思える瞬間が生まれます。
心理学の研究でも、1日に5分だけでも雑談を交わせる相手がいると、幸福感や安心感が大きく変わるというデータが報告されています。


声に出す・文字にすることで思考が整理される

心の中にある不安や悩みは、言葉にすることで初めて「形」になります。誰かに話す、あるいはSNSで文字にすることで、「自分は何に困っていたのか」「どうしたかったのか」が少しずつ見えてきます。
特に中高年世代は「弱音を吐かない」「自分のことを話すのは恥ずかしい」と感じる傾向がありますが、SNSのように気軽に書き込める場があることで、そのハードルが下がります。
結果として、「話す=内面の整理」につながり、ストレスや不安を和らげる効果が生まれるのです。


他人との接点が「自分の存在」を確認させてくれる

誰かと会話するということは、「相手がこちらの存在を認識し、応じてくれる」という体験でもあります。
これは、人間にとってとても大切な行為です。たとえば「あなたが言ってくれて嬉しかった」「その話、わかります」という反応が返ってきたとき、自分の存在が社会とつながっているという実感が得られます。
この“存在の確認”は、孤独死を恐れる高齢者にとって特に重要です。毎日誰とも話さずにいると「自分なんていてもいなくても…」という思考に陥りやすくなりますが、たった一言のやり取りで「ここにいていい」と感じられる瞬間が生まれます。


SNSが「孤独死の不安」をやわらげる“日常の工夫”に

「孤独死が不安」と感じている人にとって、誰かと“つながっている感覚”を持てることは何よりの安心材料になります。
SNSというと「若い人のもの」「難しそう」というイメージを抱くかもしれませんが、実際には60代・70代から始めた人も多く、「毎日誰かと話せるようになった」「気づけば孤独感が減った」といった声が増えています。
ここでは、SNSがどのように「孤独死の不安」に効くのか、日常にどう取り入れるかのヒントをご紹介します。


会わなくていい交流だからこそ始めやすい

中高年になると、体力や外出頻度の低下、周囲との生活リズムのズレなどから、リアルな場での交流が難しくなりがちです。
そんなとき、SNSは「会わなくてもいい」「外に出なくても人と関われる」という大きな利点があります。

実際にSNSで交流を始めた人の中には、「身だしなみを整えなくていいから気が楽だった」「スマホで気軽に挨拶できて嬉しい」といった声が多く見られました。
対面に比べて心理的ハードルが低いからこそ、無理なく始めやすい──それがSNSの強みです。


自分のペースで続けられる「習慣化」が安心につながる

孤独感を和らげるためには、「誰かとつながることを日常化する」ことがカギになります。
SNSは、朝起きたときや、寝る前のちょっとした時間など、自分のペースで関われるのが魅力です。

たとえば「毎朝、同じ人と『おはよう』を交わす」「日記に近況を投稿する」など、小さな習慣を持つだけでも、日々の孤独感は大きく変わります。
こうした“ちょっとした習慣”が、毎日の中に「人との接点」を生み、孤独死の不安を遠ざけることにつながっていきます。


声をかけ合える“ゆるいつながり”が生きる支えになる

SNSの最大の利点は、「深い関係でなくても、声をかけ合える関係が作れること」です。
たとえば、同年代の人が多いSNSでは、「同じ世代だからこそ通じ合える」「話題が自然と合う」といった交流が生まれやすく、気づけば日常的にやりとりをする“ゆるいつながり”ができていきます。

これは「いざというとき、誰かが自分の変化に気づいてくれる」という“見守り”の効果も持ちます。
孤独死の背景には、「誰にも気づかれない」「変化を見守る人がいない」という不安が大きくありますが、SNSを通じて日常的にやりとりがある人がいるだけで、その不安はぐっと小さくなります。


このように、「誰かとつながっている感覚」は、目に見えない安心を日々の暮らしにもたらしてくれます。
SNSは、そんな“ささやかなつながり”を築くための有効なツールなのです。


まとめ|「誰かと話す」を始めるのに、遅すぎることはない

60代の森田さんが語ってくれたように、「孤独死」への不安は、誰にとっても決して他人事ではありません。
ふとした瞬間に「このまま誰にも気づかれずに…」という思いがよぎるとき、それは心のどこかが助けを求めているサインなのかもしれません。

そんなとき、誰かと話せる場所があるだけで、人生の風景は変わっていきます。
それは特別なことではなく、スマホひとつで、今日からでもできる“小さな一歩”です。


大げさなことをしなくても、SNSならできる

「人とつながる」と聞くと、構えてしまう人も多いかもしれません。
でもSNSの良いところは、“相手に会わなくてもいい”“顔を見せなくてもいい”“話が続かなくても大丈夫”という気軽さにあります。

大げさな準備も、特別なスキルも必要ありません。
「おはよう」「今日は暑いね」そんな一言を交わせる場所があるだけで、日々の孤独感はずいぶんやわらぎます。


「話せる誰か」がいるだけで、人生の色が変わる

毎日をひとりで過ごしていると、時間の流れも、季節の移り変わりも、どこか色あせて見えることがあります。
けれど、誰かと一言でも言葉を交わすようになると、不思議と日々に「色」が戻ってくるものです。

「誰かに伝える」「誰かに返してもらえる」――そのやりとりこそが、自分の存在を感じさせてくれる瞬間なのです。
そんな関係を持つことは、決して若者だけの特権ではありません。むしろ、人生経験を重ねた世代だからこそ、その深さとあたたかさを実感できる交流があるのです。


今、スマホひとつからつながれる「小さな安心」を

時代は変わり、「人と話す」ことの手段も大きく広がりました。
SNSやチャットアプリといったツールを活用すれば、家の中にいても、遠くの誰かと気軽に話せる環境が手に入ります。

「スマホは苦手」「文字を打つのは面倒」と感じていた人でも、今は中高年・シニア向けのやさしいサービスも増えています。
あなたのペースで、無理なく始められる場はきっとあります。

“誰かと話す”という何気ない行為が、自分を守り、生きる力になる。
そのことを、森田さんの体験を通じて、そして多くの中高年の声から、改めて実感することができました。


孤独の不安を消す魔法はありません。でも、その不安をやわらげる“つながり”は、今日からでも始められる――。
そしてそれは、遅すぎることは絶対にないのです。

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